Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

顧客エンゲージメントとは何か(3)

顧客エンゲージメント(カスタマーエンゲージメント:CE)について理解を深めるため、コツコツを論文を読んでいます。顧客エンゲージメントについては「企業やブランドのような中心となる物事とのインタラクティブな顧客経験によって起きる心理的な状態」という定義があるようです*1。なんだか抽象的で困ります。

今日の論文は Jaakkola and Alexander(2014)*2です。顧客エンゲージメントとS-Dロジックによる価値共創の融合を試みた論文。価値共創における顧客エンゲージメント行動(Customer Engagement Behavior:CEB)のコンセプトを主張し、CEB を4つのタイプに分類しています。

研究対象はイギリスの鉄道会社。Nvivo を用いた質的研究です。以前、電車やバスのような移動手段に価値共創っていうのは起こりうるのか、というのは疑問に思っていたことがあります。本研究では、移動手段ではなく、駅やその周辺の環境整備に着目しています。

さて、言及されている CEB の4タイプは次のとおりです。

1.補強行動(Augmenting behavior)
取引を越えて、中心となる企業の提供物を直接補強したり追加(要は改善)するために顧客が知識・スキル・労力・時間を使う。

2.共同開発行動(Codeveloping behavior)
中心となる企業の提供物の開発を促進するために顧客が知識・スキル・時間を使う。

3.影響行動(Influencing behavior)
中心となる企業に関する他の行為者(actor)の知覚・傾向・知識に影響を与えるために顧客が知識・経験・時間を使う。

4.動員行動(Mobilizing behavior)
中心となる企業に対する他のステークホルダーの活動を動員するために顧客が関係性・時間を使う。

なかなかうまい日本語をつけることができません…。1.と2.は価値共創の一形態である共同生産(co-production)です。3.と4.はマルチによく見られる行動ですが、著者はインセンティブによるものは対象にしていません。あくまで自発的な行動を指しています。


しかし、まだ曖昧な用語です。さらに顧客エンゲージメントについてレビューしていきたいと思います。

*1:まだこれについて言及している論文は読んでないです。

*2:Jaakkola, E., and Alexander, M. (2014). The Role of Customer Engagement Behavior in Value Co-Creation A Service System Perspective. Journal of Service Research, 17(3), 247-261.

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