Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

顧客エンゲージメントの4つの価値

今日読んだ論文は、Kumar et al.(2010)*1です。タイトルは「過小評価/過大評価される顧客 総顧客エンゲージメント価値を捉える」。顧客エンゲージメントを量的に表すにはどうしたらいいか、そのフレームワークを提案しています。ぼんやりした顧客エンゲージメント論が少しハッキリしていきました。


Kumar et al.(2010)の貢献は、あいまいな顧客エンゲージメントを4つの顧客価値として示したことです。カスタマー・エクイティの議論を進めた感じの印象です。4つの顧客価値とは次のものです。

  • 顧客生涯価値(生涯価値)CLV
  • 顧客紹介価値(紹介価値)CRV
  • 顧客影響価値(影響価値)CIV
  • 顧客知識価値(知識価値)CKV


漢字が小さく詰まってゲシュタルト崩壊しそうですね。1つ1つはそんなに難しいものではありません。これまでの顧客エンゲージメント論では、顧客エンゲージメントを購入後の顧客の行動に焦点を当てていましたが、購入すること自体もやはり大切である、という理由から生涯価値(Customer Livetime Value)も顧客エンゲージメント価値だと Kumar らはいいます。


紹介価値(Customer Referral Value)とは、既存顧客がインセンティブ付きの紹介制度を利用して新規顧客を紹介してくれたかどうかを表すものです。内発的な行動ではありませんが、新規客は企業にとって価値のあるものです。


影響価値(Customer Influence Value)とは、既存顧客が内発的に(自主的に)新規顧客や見込み客を紹介したり、クチコミをしたり、ブログやSNSで発信することです。この影響価値にはプラスとマイナスの両方があります。悪いクチコミがされると企業にとってマイナスに影響をするからです。


知識価値(Customer Knowledge Value)とは、顧客が企業にフィードバックする知識がどれだけあるかを表すものです。顧客の声は新製品・新サービスの開発や既存商品の改善に役立ちます。いまふうに言うなら、企業の提供物を共創*2するときに役立つので、知識価値を増やすように企業がどう働きかけるかが重要というわけです。


他にも、CLV・CRV・CIV・CKVの関係など、興味深いことがたくさん書いてあります。ぜひ読んでみてください!

*1:Kumar, V., Aksoy, L., Donkers, B., Venkatesan, R., Wiesel, T., & Tillmanns, S. (2010). Undervalued or overvalued customers: capturing total customer engagement value. Journal of Service Research, 13(3), 297-310.

*2:これは広義の価値共創のこと。厳密には Co-Production。

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