Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

顧客エンゲージメントが生まれた背景がわかる論稿

今回読んだのは、Verhoef et al.(2010)*1 です。タイトルは ”Customer engagement as a new perspective in customer management”。日本語だと「顧客管理における新しい視点としての顧客エンゲージメント」。

 
JSR の顧客エンゲージメントが特集された号の巻頭言的な論稿で「今号はこんな論文が載っているよ。それぞれの論文にはつながりがあるよ」という説明文書といった感じです。参考になったのは、顧客管理(CM:Customer Management)の発展の流れから顧客エンゲージメントが生まれた背景を説明してくれるところです。

CM ・ CRM は(導入の失敗で)企業の受けが悪いけれども、現代はそれなしでは考えられない。アカデミックな CM の研究領域には2つの大きな流れがある。1つは顧客を企業にとっての資産と見ること。それをどう測り、評価するのか、先行条件や成果はどんなものがあるのかを調べることが主な目的。もう1つは CM の実践方法を調べること。つまり、CM のメカニズムやドライバーを研究する。

 
CM の歴史を超簡単に振り返ったあとに、顧客エンゲージメントの大切さを語ります。顧客が他の顧客や企業と簡単につながれる社会になったいま、商品やサービスの購入だけに焦点を当てるのではなく、購入外のことを考えたほうがよい、と。顧客エンゲージメントとは、顧客の購入外の多様な行動を指します(この論稿では)。例えば、口コミ、ブログ、ランク付け(評価)など。

 
その後、掲載されている論文のつながりを図示して(下図)、顧客エンゲージメントは実りある新しい研究に必ずなるよ、といいます。

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出所:Verhoef et al.(2010)

 

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サービス・ドミナント・ロジックでいう使用価値・文脈価値を考える際、顧客の購入後の行動を考えることが重要だろうと思っています。そこで、これまで顧客エンゲージメント論の先行研究を読んできました。これでだいたい主要な文献は読めました。ただ、もっと理解は深める必要を感じています。

 
あと、なかなか日本語の研究は見当たりません。探し方が悪いのか「エンゲージメント」という言葉が使われていないのか。ちょっと考えてみます。

*1:Verhoef, P. C., Reinartz, W. J., & Krafft, M. (2010). Customer engagement as a new perspective in customer management. Journal of Service Research, 13(3), 247-252.

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