Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

マーケティング・サイエンスの一端を知る

今日は日本マーケティング・サイエンス学会(略して、JIMS。ジムズって言うとか)の論文誌『マーケティング・サイエンス』とRで学ぶデータサイエンスシリーズの『マーケティング・モデル』第2版を読んでいました。

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『マーケティング・サイエンス』は先日、新しい23号が送られてきたので、まだ読んでいなかった22号と合わせて通読。ざーっと目を通した印象としては「数学ができないと辛い」です。まあ、これはコツコツ勉強していけばいいので大問題ではないです*1。とはいえ、『基礎から学ぶベイズ統計学』のおかげで、なんとか数式を終えるくらいにはなりました。

 
大規模な会社、ネット関連、ビッグデータ、ネット広告、SNS関連の話題が多いことです。自分のような小規模な会社に勤め、関わる人間(うちの会社は15名だし、関わる仕事もだいたい数名~10名くらいの歯科医院ですし)にはピンとこない話題が多い*2

 
研究としてはそちらのほうが華々しいだろうし、小規模会社はデータが取れないことが多いので、結果としてはそうなることは仕方ないです。でも、中小・零細企業への応用にピンきそうな、もしくはもっと身近な話題が増えればいいなと思います。

 
ここでマーケティング・サイエンスの定義を確認します。論文誌『マーケティング・サイエンス』の編集方針・投稿要領には、ある本*3の引用で次のように記載されています。

データと論理に基いて市場を捉えるための基本的な考え方、および具体的方法を探求するものであり、常にマネジリアルな視点から発想されるもの

 
なるほど。本を読んでいないので「マネジリアルな視点」というのが具体的にはよくわからないけれど、難しそうな数学とか分析とかを使わなくてもいいのか。そうすると、ビジネススクールを修了するために書いた論文*4もマーケティング・サイエンスの領域になりそう。

 
論文誌の載っているような分析はまだできないので「マーケティング・サイエンス、気になります」とは堂々と言えなかったのですが、もっと深く知って、言ってみてもよさそうです。

マーケティング・モデル 第2版 (Rで学ぶデータサイエンス 13)

マーケティング・モデル 第2版 (Rで学ぶデータサイエンス 13)

*1:いちばんの問題は、わからないことがあれば質問できる人が近くにいないこと。

*2:22号の「飲食サービスを利用したおもてなし消費構造の分析」(宮井・西尾 2014)は自分に関係ありそうな論文でした。

*3:片平秀貴『マーケティング・サイエンス』東京大学出版会、1984年。

*4:同志社ビジネススクールでは「ソリューションレポート」と言われ、その執筆が修了要件の1つです。でも、正式な修士論文ではありません。「修士論文相当の論文」になります。これが人生初の論文でした。昔、大学生のときは卒論書かなくてもよかったので。

サービス経済なんて存在しない! "Service-Dominant Logic" (2014)を読む 2日目

かなり間が空きましたが、 Service-Dominant Logic(2014)を20~30ページまで読了。30ページまでが第1章です。タイトルは "The service-dominant mindeset"。第1章だけ読んでも、だいたいサービス・ドミナント・ロジックについてはわかります。

 
この章の後半は刺激的な言葉が並びます。

  • S-D ロジックで考えると、マーケティングは部門の一部が担当するものではなく企業全体にとっての最優先事項である。
  • サービス*1経済なんてない。
  • サービス業*2なんてない。
  • 生産者も消費者もいない。
  • 企業は単独で価値を生み出せない。
  • 企業には(サプライヤーや消費者との間に)比較的境界がない。
  • マーケットは存在しない。

 
後半2つはまだよく理解できませんが、Lusch & Vargo は「S-D ロジックは直感に反するものだ」と説いています。たしかに、上記の項目は通常の私たちの理解とは異なります。

 
私が注目したのは23ページからです。Lusch & Vargo はここではっきりと「使用価値(Value-in-use)という言葉は適切ではなく、文脈価値(Value-in-context)と呼ぶのがもっともだ」的なことを書いています。

 
また「価値が特有に作られ評価される社会システムの文脈の中で価値創造を捉える必要がある」とも言っています。要は価値創造の現場は1つとして同じ状況・背景(すなわちコンテクスト:文脈)がない、というわけです。

 
なんだか哲学的になってきました。このあたりをわかりやすく説明できたら、もっと世間に S-D ロジックが受け入れられそうです。サービス研究者の踏ん張りどころなのでしょうね*3

 
なお、S-D ロジックについてまったく知らない方はこちらを参照してください。 hikaru1122.hatenadiary.jp

 
以上、Service-Dominant Logic(2014)の2日目でした。

Service-Dominant Logic: Premises, Perspectives, Possibilities

Service-Dominant Logic: Premises, Perspectives, Possibilities

*1:これは複数形のサービス。

*2:これも複数形のサービス。

*3:私はまだ研究者ではないですけど…。

分布がいろいろ増えるぞ『基礎からのベイズ統計学』 10日目

ついに『基礎からのベイズ統計学』10日目です。今回は第7章を読み進めました。ようやくポアソン分布とか指数分布とか、自分にはなじみにのない分布に慣れてきたところです。第7章では他に、幾何分布、負の二項分布が加わります。

 
Stan に慣れはじめたところに学習する分布が増えたたので、ちょっと消化不良気味。しかし、もっと慣れるしかありません。「習うより慣れろ」でしょうか。Stan コードをとにかくコピべ・分析実行しています。

 
ただ、分析はクリック1つで進むので、つい基本事項を忘れてしまいます。分析をしていて「ベイズ推定って何をやってるんだっけ?」とか「尤度(ゆうど)ってなんだっけ?」ということが、ふと思い浮かびます。そういうときは、なるべく調べて解決するようにしています。尤度はここでけっこうスッキリしました。
myenigma.hatenablog.com

 

★ ★ ★

ちょっとベイズ推定に慣れて思うことがあります。それは「ビジネスパーソンこそ(簡単な)ベイズ推定ができればいいのに」ということです。何らかの検定をする時に ―― 差がありました/ありませんでした ―― の話で終わらず、「こうなる場合は●%あります」と言えたほうが有利だと思うのです。

 
もう2~3年して「ビジネスパーソンのためのベイズ統計分析入門」みたいな本が出たらいいのになぁ(すでにExcelでできる、という本があるけれど)。

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

サポートグループ作りたいなぁ… 『できる研究者の論文生産術』

以前、途中まで読んでいた『できる研究者の論文生産術』を再開しました。3ヶ月前に読んでいたと思います。そのときは

  • スケジュールを立てる。
  • そのスケジュールを死守する。
  • スケジュール中でやることは、論文を書くために必要なものは何でもOK。

という3つのヒントを得ました。そして「月曜日に2時間、木曜日に1時間、金曜日に1時間」というスケジュールを立て、実行しました*1。結果として、スケジュールをは身についたと思います。

 
ただ、論文・文章を書くのではなく、そのための勉強・先行研究を読むことばかりになっていたました。修士論文相当の論文しか書いたことがありませんから、自分の中で論文のフォーマットが決まっていないのだと思います。だから、執筆することが敷居が高く感じるのかと。

 
現在の私の課題は論文を書く前段階の研究計画を作り、発表することです。8月末に1つ、研究計画を提出しないといけませんし(日本商業学会主催の「マーケティング夏の学校」に参加するので)、9月には後期課程のプレゼン試験があります。

 
今回『できる研究者の論文生産術』を通読して身につまされたのは「サポートグループ」の存在です。いないんですよね…。DBS を修了してからは特に*2

 
関西では大学外の勉強会があまり行われていません*3。そもそも関東と比べて、社会科学系で社会人をしながら研究をしようという人の数が少ない*4。なので、大学院を出てしまったら、そういう人たちに会う確率が極端に減る。あぁ、孤独の研究から脱出したい! 関西在住で同じ境遇の方がいらっしゃたら、ぜひサポートグループを作りましょう。

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

*1:仕事が終わってから、このスケジュールを実施します。0時~2時または0時~1時で行っています。

*2:在籍時はゼミがサポートグループでした。

*3:読書会はいくつかありますし、主催していますが、専門的なものはIT系以外はないようです。社会科学系で本書でいうサポートグループをご存知でしたら、教えてください。

*4:単に人口比のせいかな

知的な文章を書くために問いかける8つの質問

文章を書くこと自体は苦手ではないです。でも、自分の文章を読み返すのがすごく苦手です。苦痛といってもいいくらい。仕事で書いた日報も読み返すと、たいへんエネルギーを使います。

 
その理由は「書く行為は嫌いではいけど、書いた文章が嫌い」、そして「客観的に見ることができない」からではと思っています。書いた文章に自信がないわけです。

 
ということで、少しでもいい文章を目指すために『論文の書き方』(清水幾太郎、1959年)を読んでみました。選んだ理由は DBS の先輩や先生が勧めたのを見たからです。

 
なんと94刷。ビックリです。岩波新書の昔に書かれた本はフォントが読みにくいと思っていましたが、きれいなフォントで読みやすかった。
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読んで得た教訓は次のとおりです。

  • 無意識に曖昧な表現になっていないか?
  • 肯定か否定か、ちゃんとポジションを取っているか?
  • 文章中の言葉の定義はなされているか?
  • 自分の文章を外国語のように客観的に扱っているか?
  • 十分な知識を得てから文章を書いているか?
  • 得た知識を詰め込もうと欲張っていないか?
  • 自分の意見を主張するために、既存研究の系譜を述べているか?
  • 短い文でビシッと書かれているか?

 
以下、印象に残ったところを引用します。  
 

古くてもよい、新しくてもよい、或る思想家を自分で選んで、そのスタイルの模倣から出発すべきである。
52頁

これは「お手本の論文を見つけて、それを下敷きにしなさい」と解釈しました。実際、DBS を修了するときの論文はそうしました。いいお手本をあといくつかほしいので、探しています。  
 

初めの部分で時事的な話題に触れると、読者の心が素直に動き出す。筆者と読者との間に具体的状況の共有が成り立つ。これを足場に確保しておいて、それから、この時事的な話題の分析や批判を通して、次第にアクチュアルではない本題へ入っていくのである。
81頁

これは論文というより、ブログ向けです。ただ、時事問題を扱うブログではないので、あまり関係ないでしょうか。一般向けの文章を書くときには気をつけたい項目です。

 

どうにでも受け取れるような曖昧な表現は避けねばならない。
81頁

簡潔明瞭にせよ。気をつけます…。

 

主語がハッキリしていること、肯定か否定かがハッキリしていることが大切である。
81頁

ここは苦手です。つい曖昧にしてしまいます。「ポジションを取れているか?」と自分に問いかけたいです。  
 

自分の書体やインキの色が妙に気にかかるのは、大抵、定義の甘さが原因で、ドンドンと先へ書き進むのが不安になってきた証拠である。危険信号が上ったら、自分の使っている一語一語を選び直した方がよい。
94頁

現在はパソコンを使って書くので、インクの色は関係です。でも、文章は入力できなくなるときはよくあります。上記のことが原因かもしれない…。これも気をつけよう。  
 

文章を書くのには、日本語に対する甘ったれた無意識状態から抜けださなければならない。(中略)文章を書く人間は、日本語を一種の外国語として慎重に取り扱った方がよい。
101頁

何気なくダラダラした文章を書くのはよくあります。客観的に見ろ、ということでしょう。これができないから、自分の文章を読み返すのが苦痛なのかもしれない。もっと客観的に、他人の文章のようい自分の文章を読めばよさそうです。  
 

知っていることが100*1でも、書くことは2か3ぐらいなもので、残った97か98は、私たちが書く時に不安を和らげる役割を果たせばよい。
146頁

これは DBS のゼミの先生に言われたことがあります。知っていることをすべて書くわけにはいかない。でも、書くためにはたくさんのことを知っておかないといけない。つらいけど、宿命でしょうね…。  
 

文章には、攻める面と守る面とがある。(中略)攻撃というのは、自分の意見や発見を主張する側面である。(中略)守備というのは、自分の意見や発見が、学説の上と現実の上とで、社会的に孤立しないように、そこにしっかりと足場を固める作業である。
146頁

「攻撃・守備」という視点は新鮮でした。言いっぱなし(攻撃)は得意ですが、守備は苦手。これも文章を書くときは頭の片隅に入れます。  
 

新しく覚えた抽象的用語にのぼせて、この用語を振り廻してもいけないし、これに振り廻されてもいけない。
183頁

「サービス・ドミナント・ロジック」という言葉は特に要注意。なんとなく意味がわかるような、かっこいいような「雰囲気用語」には気をつけます。  
 

「……というようなもの」という言葉を、毎日、私たちは無数に使っている。所要時間はますます長くなる。密度はいよいよ低くなる。
197頁

自分の「文章作成あるある」です。これも自分の文章を曖昧にする敵。  
 

私の経験では、複雑な内容を正しく表現しようとすればするほど、1つ1つの文章は短くして、これをキッチリ積み重ねて行かねばならないように思う。
211頁

短い文章にすると印象がきつくなるんじゃないか、と思い、つい言い切りをためらいます。「ポジションを取る」のと同様に、言い切りは簡潔明瞭な文章作成に重要なので、気をつけよう。  
 

短い文で1つのシーンをピシっと描き、必要があれば、文と文とを強い接続詞で繋いで行けば、決して蛋白にもならず、繊弱にもならないであろう。
212頁

これも先ほどと同じ。この本の中で何度も言われることでした。

 
ずいぶん昔の本ですが、文章の共通点は現代でもやはり同じですね。特に「ポジションを取る」ことに気をつけていきたいです。  

論文の書き方 (岩波新書)

論文の書き方 (岩波新書)

*1:原文ではすべて漢数字になっています。読みやすさを優先してアラビア数字を使っています。

やっと半分まで来たかな 『基礎からのベイズ統計学』 6日目(飛び飛びで読んでます)

6日目は57~72ページの章末問題手前まで読み進めました。いろいろな分布を例題を通して学ぶことができます。レポート問題、波平釣果問題、3囚人問題再びは興味深かった。ページ数的にはだいたいここで本全体の半分です。

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

 
特に、3囚人問題は「正解が{ \displaystyle \frac{1}{2}}でもいいし、{ \displaystyle \frac{1}{3}}でもよい」というのは衝撃でした。ベイズ統計ってずいぶん柔軟なんだなぁ、と関心。「狐につままれた感」はありますけど。

 
また、「公的分析と私的分析ははっきり区別すべきである」というのも、印象に残っています。柔軟であるがゆえに、こういうところを注意しておかないと間違った使い方をしてしまうのかもしれません。

 
71ページの「変数変換の公式によって」のところは理解できず。まぁ、大勢には問題ないかも。  
 
今回はポアソン分布、指数分布、ガンマ分布というのが出てきました。「数式に慣れるためには、ディスプレイに実際に打ち込んでみるのがよい」とどこかの本で読んだ記憶があるので(靜哲人『基礎から深く理解するラッシュモデリング』の中だったかも)、最後に勉強用として残しておきます。

 
ポアソン分布は、 { \displaystyle
f(x|\lambda) = \frac{e^{-\lambda}\lambda^{x}}{x!}
}

期待値と分散はそれぞれ  E(X) = \lambda V(X) = \lambda

 
指数分布は、 { \displaystyle
f(x|\lambda) = \lambda e^{-\lambda x}
}

期待値と分散はそれぞれ { \displaystyle E(X) = \frac{1}{\lambda}}{ \displaystyle V(X) = \frac{1}{\lambda^{2}}}

 
ガンマ分布は、 { \displaystyle
f(x|\alpha , \lambda) = \frac{\lambda^{\alpha}}{\Gamma(\alpha)}x^{\alpha - 1} e^{-\lambda x}
}

期待値と分散はそれぞれ { \displaystyle E(X) = \frac{\alpha}{\lambda}}{ \displaystyle V(X) = \frac{\alpha}{\lambda^{2}}}

【追記あり 7/26】『基礎からのベイズ統計学』 5日目(飛び飛びで読んでます)

『基礎からのベイズ統計学』5日目から、第3章に入りました。46~56ページを眠気と闘いながら読み進めました。いくつか重要な単語が出てきています。  

  • 事前分布
  • 事後分布
  • MAP推定量(Maxium a posteriori=事後確率最大値)
  • 信用区間
  • 自然共役事前分布
  • 無情報的事前分布
  • 局所一様事前分布

 
「MAP推定量」という言葉はどこかで聞いたことがあって、漠然と知っていたのですが「事後分布のモードを推定値とする」という説明を見て、なんとか理解できました。

 
この本では、信用区間に「確信区間」という単語が使われています。「信頼区間と信用区間」よりは「信頼区間と確信区間」のほうが区別がつきやすいですね。でも、あまり確信区間という言葉は見ませんので、信用区間のほうに慣れようと思います。

 
51ページはちょっとわからなかった…。どこから  p q の数値が決まったのか理解できず。これはもう表から自動的にわかるものだとむりやり納得して先に進んでしまいました。

 
だんだん本格的っぽく、そして難しくなっています。だいたい10ページごとが自分にはいいペースのようです。

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門

【追記(2015年7月26日)】
上のほうで「51ページがちょっとわからなかった」と書いたところ、twitter 経由でアドバイスをいただきました。前章の(2.48)式と(2.46)式を素直に適用すれば解けました。同じところの

 V(X) = 0.016\ (= 0.8 \times 0.2)と推定され

というところで混乱したのかも(まちがい?)。 0.8 \times 0.2 0.16 ですし。

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