知的な文章を書くために問いかける8つの質問
文章を書くこと自体は苦手ではないです。でも、自分の文章を読み返すのがすごく苦手です。苦痛といってもいいくらい。仕事で書いた日報も読み返すと、たいへんエネルギーを使います。
その理由は「書く行為は嫌いではいけど、書いた文章が嫌い」、そして「客観的に見ることができない」からではと思っています。書いた文章に自信がないわけです。
ということで、少しでもいい文章を目指すために『論文の書き方』(清水幾太郎、1959年)を読んでみました。選んだ理由は DBS の先輩や先生が勧めたのを見たからです。
なんと94刷。ビックリです。岩波新書の昔に書かれた本はフォントが読みにくいと思っていましたが、きれいなフォントで読みやすかった。
読んで得た教訓は次のとおりです。
- 無意識に曖昧な表現になっていないか?
- 肯定か否定か、ちゃんとポジションを取っているか?
- 文章中の言葉の定義はなされているか?
- 自分の文章を外国語のように客観的に扱っているか?
- 十分な知識を得てから文章を書いているか?
- 得た知識を詰め込もうと欲張っていないか?
- 自分の意見を主張するために、既存研究の系譜を述べているか?
- 短い文でビシッと書かれているか?
以下、印象に残ったところを引用します。
古くてもよい、新しくてもよい、或る思想家を自分で選んで、そのスタイルの模倣から出発すべきである。
52頁
これは「お手本の論文を見つけて、それを下敷きにしなさい」と解釈しました。実際、DBS を修了するときの論文はそうしました。いいお手本をあといくつかほしいので、探しています。
初めの部分で時事的な話題に触れると、読者の心が素直に動き出す。筆者と読者との間に具体的状況の共有が成り立つ。これを足場に確保しておいて、それから、この時事的な話題の分析や批判を通して、次第にアクチュアルではない本題へ入っていくのである。
81頁
これは論文というより、ブログ向けです。ただ、時事問題を扱うブログではないので、あまり関係ないでしょうか。一般向けの文章を書くときには気をつけたい項目です。
どうにでも受け取れるような曖昧な表現は避けねばならない。
81頁
簡潔明瞭にせよ。気をつけます…。
主語がハッキリしていること、肯定か否定かがハッキリしていることが大切である。
81頁
ここは苦手です。つい曖昧にしてしまいます。「ポジションを取れているか?」と自分に問いかけたいです。
自分の書体やインキの色が妙に気にかかるのは、大抵、定義の甘さが原因で、ドンドンと先へ書き進むのが不安になってきた証拠である。危険信号が上ったら、自分の使っている一語一語を選び直した方がよい。
94頁
現在はパソコンを使って書くので、インクの色は関係です。でも、文章は入力できなくなるときはよくあります。上記のことが原因かもしれない…。これも気をつけよう。
文章を書くのには、日本語に対する甘ったれた無意識状態から抜けださなければならない。(中略)文章を書く人間は、日本語を一種の外国語として慎重に取り扱った方がよい。
101頁
何気なくダラダラした文章を書くのはよくあります。客観的に見ろ、ということでしょう。これができないから、自分の文章を読み返すのが苦痛なのかもしれない。もっと客観的に、他人の文章のようい自分の文章を読めばよさそうです。
知っていることが100*1でも、書くことは2か3ぐらいなもので、残った97か98は、私たちが書く時に不安を和らげる役割を果たせばよい。
146頁
これは DBS のゼミの先生に言われたことがあります。知っていることをすべて書くわけにはいかない。でも、書くためにはたくさんのことを知っておかないといけない。つらいけど、宿命でしょうね…。
文章には、攻める面と守る面とがある。(中略)攻撃というのは、自分の意見や発見を主張する側面である。(中略)守備というのは、自分の意見や発見が、学説の上と現実の上とで、社会的に孤立しないように、そこにしっかりと足場を固める作業である。
146頁
「攻撃・守備」という視点は新鮮でした。言いっぱなし(攻撃)は得意ですが、守備は苦手。これも文章を書くときは頭の片隅に入れます。
新しく覚えた抽象的用語にのぼせて、この用語を振り廻してもいけないし、これに振り廻されてもいけない。
183頁
「サービス・ドミナント・ロジック」という言葉は特に要注意。なんとなく意味がわかるような、かっこいいような「雰囲気用語」には気をつけます。
「……というようなもの」という言葉を、毎日、私たちは無数に使っている。所要時間はますます長くなる。密度はいよいよ低くなる。
197頁
自分の「文章作成あるある」です。これも自分の文章を曖昧にする敵。
私の経験では、複雑な内容を正しく表現しようとすればするほど、1つ1つの文章は短くして、これをキッチリ積み重ねて行かねばならないように思う。
211頁
短い文章にすると印象がきつくなるんじゃないか、と思い、つい言い切りをためらいます。「ポジションを取る」のと同様に、言い切りは簡潔明瞭な文章作成に重要なので、気をつけよう。
短い文で1つのシーンをピシっと描き、必要があれば、文と文とを強い接続詞で繋いで行けば、決して蛋白にもならず、繊弱にもならないであろう。
212頁
これも先ほどと同じ。この本の中で何度も言われることでした。
ずいぶん昔の本ですが、文章の共通点は現代でもやはり同じですね。特に「ポジションを取る」ことに気をつけていきたいです。
- 作者: 清水幾太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1959/03/17
- メディア: 新書
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*1:原文ではすべて漢数字になっています。読みやすさを優先してアラビア数字を使っています。