Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

顧客の事前期待に応えるサービスのあり方(2)

前回の続きです。前回を読まれていない方は↓からどうぞ。


諏訪(2011)*1のレビューの続きです。この論文のおもしろいところは事前期待の分類であることは前回お伝えしました。事前期待の意味は、文字通りです。顧客がサービスを受ける前に抱いている期待です。事前期待は次の3つにわかれます。

1.事前期待の対象
2.事前期待の持ち方
3.事前期待の持ち主

1.と3.についてはぜひ論考を読んでみてください。論文っぽいやつは苦手なんだよね、という方は著者の本を読まれることをオススメします。私もサービス研究を始めた頃に読んだことがあります。

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

 

 

話を「事前期待の持ち方」に絞ります。事前期待について批判的に見ると次の疑問がわいてきます。「顧客が前もって持っている期待に添うだけで満足を与えられるのか? 感動にはならないのではないか?」。こういう疑問も想定済みのようで、「事前期待の持ち方」は4種類設定されています。

a.共通的な事前期待
b.個別的な事前期待
c.状況で変化する事前期待
d.潜在的な事前期待

共通的な事前期待とは、顧客の多くが持っている期待のことです。医療なら、清潔な診療室とか的確な治療でしょう。b. と c. は「お・も・て・な・し」(古くてスミマセン)で直感的にわかります。自分の好みや状況や環境に合わせてカスタマイズされたサービス提供によって、b. や c. の事前期待を上回ることができます。

d. は顧客が想定していないもので、さらに提供されたら嬉しいサービス経験を得たときに上回る事前期待です。持ってないのに"事前"期待というのはちょっと言葉に矛盾がありますが、そのあたりは問題ではありません。

ポジティブな予想外、サプライズがなされると、顧客は感動し、ホスピタリティがあるなどとと喜ぶでしょう。諏訪(2011)は「このようなサービスができるのはプロ意識に徹しているからであったり、お客様をとことん大切にしているからだろう」と述べています(437頁)。

上記4つの事前期待に対応するサービスも分類されています。共通的な事前期待に対応するのは「当たり前サービス」や「マニュアルサービス」、個別的な事前期待には「価値あるサービス」「one to one サービス」「素晴らしいサービス」、状況で変化する事前期待には「素晴らしいサービス」「ホスピタリティサービス」「感動サービス」、潜在的な事前期待には「ホスピタリティサービス」「感動サービス」です。

以上、諏訪(2011)の要点でした。論考や本をぜひ読まれてください。とても興味深いですよ。

 

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

 

 

*1:諏訪良武(2011)「サービス企業のイノベーションの実践」『オペレーションズ・リサーチ』, 56(8), 431-438。

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