Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

顧客の事前期待に応えるサービスのあり方(1)

このブログで使っている「サービス」という言葉は2つ意味があります。1つはそのまんまの意味で「サービス業」を指している場合。英語だと services(複数形のサービス)です。

もう1つは、Vargo and Lusch(2004)*1から議論されている「サービス」を指している場合。英語だと service(単数形のサービス)です。これは具体的なサービスではなくて、「スキルや知識を相手の便益のために活用する」というとっても抽象的なものです。この視点に基づくと、モノもサービスも同じ土俵で議論できます。

さて、今日の論文、諏訪(2011)*2は前者を議論してから、後者でもないサービスの定義をしています。論文というより論考で、とっても読みやすいです。はじめのほうは著者がやっていた仕事の内容、業務改革が語られます。おもしろくなってくるのは15節目「サービスサイエンスにつながるサービス改革」から。

著者はサービスを「人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するもの」(436頁)と定義します。事前期待の議論は、サービス業をしている人にとって勉強になります。事前期待は3つに分類されます。

 

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出所:諏訪(2011), 437頁。

顧客の抱く期待と実際に提供されたサービス内容(最近はサービス経験と言ったりしてる)によって顧客満足(カスタマーサティスファクション:CS)が形成されるというのは Oliver(1980)*3の「期待-不一致モデル」を踏襲していますが、事前期待がしっかりと分類されていて、業務に応用しやすいように提示してくれたのが、この論文のいいところです。

事前期待についてはもう少しレビューした方がよさそうなので、続きは次回にしたいと思います。

*1:Vargo, S. L., and Lusch, R. F. (2004). Evolving to a new dominant logic for marketing. Journal of marketing , 68(1), 1-17.

*2:諏訪良武(2011)「サービス企業のイノベーションの実践」『オペレーションズ・リサーチ』, 56(8), 431-438。

*3:Oliver, R. L. (1980). A cognitive model of the antecedents and consequences of satisfaction decisions.  Journal of marketing research , 460-469.

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