サービス学会 国内大会 第4回@神戸に参加してきました
ここ最近、統計の勉強そっちのけでずっと参加報告ばかりですが、そういう時期なんです…。2016年3月28~29日に神戸大学で開催されたサービス学会第4回国内大会に参加しました。実際に参加したのは29日だけです。本当は2日間にしたかったんですが、仕事やら何やらで1日に…。社会人学生あるあるです。
今回のサービス学会 国内大会の概要はこちら。
http://ja.serviceology.org/events/domestic2016.html
サービス学会はマーケティング学会と同様、実務家がとっても多いです。なので、社会人学生*1も参加しやすい。発表もいろいろ。完全に数理なものもあれば、現場密着の発表もあります。分野も幅広い。どちらかというと工学系が多いですが、経営系もがんばっています。大会プログラムは誰でも見ることができるので、見てみてください。
個人的には、ポスター発表が好き。直接いろいろと質問できるので。自分のフィールドの歯科医院に関する研究がいくつかあったのは驚きでした。自分くらいしかやってないだろうと思っていたので。
なお今回参加して、いちばん印象に残ったのが、学会長がいちばん前の席に座って積極的に質問をされていたことです。これは学会長より年下の自分が後ろの席でこそこそ聞いている場合ではないな、と反省した次第。今年度はがんばります…。
*1:まあ、実務家ですから当たり前なのですが。
行動計量学会 春の合宿セミナーに参加
機械学習(Aコース)ではなく、統計分析のコース(Bコース)を選びました。2016年3月25日~27日の3日間開催されるのですが、仕事やその他の都合で25日夜~26日の夕方までの参加です。
概要はこちらのページにあります。
http://www.bsj.gr.jp/event/spring_semi.html#18th
HAD はこれまでちょくちょく使っていたのですが、開発者直々に教えていただけるよいチャンスだと思って参加した次第です。ちなみに、私の使い方は
- ざっとデータを HAD でいじってみて、あたりをつける。
- その後、R や SPSS などで確かめる。
という、たぶんよくある使い方をしています。HAD の使い方で今回いちばんヒットしたのは、データの読み込みボタンがあること。ぜんぜん気づきませんでした…。とても便利*1。
春の合宿セミナーについての他の感想としては、こういう会にもっと社会人大学院生が出てくれたらいいなということです*2。ふだん忙しいからこそ、ちょっと時間をがんばって作って、1日でもいいから集中して学べる環境にいると、効率よく勉強できると思います。
それに直接、講師の先生に質問できるいい機会です。講義修了後の懇親会的な催しで、いくつか質問に答えていただけて、統計分析の悩みがすっきりしました。やっぱりフットワーク軽く、詳しい先生のところに訊きに行くのはとても大事だなと再確認できた2日間でした。
量的アプローチによる価値共創の研究発表@第6回知識共創フォーラム in 金沢
先週(2016年3月12〜13日),金沢で開催された第6回知識共創フォーラムで発表をしてきました。相馬・清水(2015)*1に大きく影響を受けた分析の結果発表でした。もともと潜在ランク理論はどこかで知っていて,自分の研究に使えそうだなぁと思っていたところに相馬・清水(2015)が出たので,その時はとても驚きました。
発表タイトルは「価値共創の促進に意味はあるか?」です。情報学系な人には参考にならないと思いますが,経営学系で量的な研究をされる方(本当に少ないと思うけれど…)の少しでも参考になれば,と思います。
発表に使ったスライドは下です。
www.slideshare.net
分析の方法・ツールなど
分析の方法・ツールなどは次のとおりです。過去,本ブログや Kobe.R で発表してきたまとめ的な分析を行いました。
分析の方法 | 使用したツール |
---|---|
潜在ランク理論 | exametrica |
ウィルコクソンの順位和検定 | R, wlicox.test() |
クラスカル・ウォリス検定 | R, kruskal.test() |
線形連関の検定 | R, coin::lbl_test() |
ベイズ推定による多項ロジスティック回帰 | R, brms::brm() |
ロジスティック回帰(普通の) | R, glm() |
今回の発表はケーススタディが多い(ような気がする)共創研究に量的アプローチを行った例です。分析に使ったアンケートは1〜7のリッカート尺度なので,独立性の検定にはノンパラメトリック検定を使っています。
ベイズ推定による多項ロジスティック回帰
brms パッケージを使用しました。以下のコードで一発です。下でも書きましたが,brm()のオプションはまだ理解していません。
library(brms) rstan_options(auto_write = TRUE) options(mc.cores = parallel::detectCores()) fit1 <- brm(qol ~ kyousou, data = d, family = categorical)
使用したデータはこちらに置いておきました。気になる方はお試しください。
分析でわからないところ
誰にも聞けなかった(というか,周りにわかる人がいない)ため,自信がない・わからないところは次のとおりです。
最後の2つの分析(多項ロジスティックと普通のロジスティック回帰)では,アンケート結果を間隔尺度として扱いました。尺度の扱いに一貫性がないのはどうかなぁ,と思っていますが判断がつきません…。
さらに,多項ロジスティック回帰はアンケート結果を名義尺度にしてしまいました。これも適切かどうか…。1〜7のうちどの選択肢が選ばれるかという観点から多項ロジスティック回帰でやってみようとした次第です。
多項ロジスティック回帰はベイズ推定を使ってやってみましたが,オプションは初期値ままです。収束はしたので大丈夫かとは思いましたが,適切な初期設定を知りたいところです。
発表を終えて
実は,今回が初めての口頭発表でした。聞いてくれた方のうち,おもしろいと思ってくれた方はいたようでホッとしました。どのへんがおもしろかったか,ちゃんと確認しておけばよかった。また今回の発表では因果関係を示したわけではないので,因果を調べられるようになりたいものです。
*1:相馬敏彦・清水裕士(2015)「ワンランク上のブランド・コミットメントはどう形成されるのか? ─顧客の潜在ランクへの分類と拡張版投資モデルのブランドの適用─」『マーケティングジャーナル』第35巻第3号,75-94頁.
その有意差に意味あるの? ~ノンパラメトリック検定と効果量の出し方~
Kobe.R 第24回で発表をしてきました。今回は来週日曜日に金沢で発表する内容のデータ分析部分(特にRの操作)をメインに切り出したものを発表しました。
↓使用したスライドはこちらにあります↓
RPubs - Rによるノンパラメトリック検定と効果量の出し方
slideshare はこちらです。Rstuido だと Rpubs にも PDF にも簡単出力できるので便利ですね。
トピックとしては
- wilcox.test(マイ・ホイットニーのU検定)は formula を使ったほうがわかりやすいこと。
- 効果量 cliff の d は orddom パッケージの delta で確認できること。
- R の発表は Rmd が便利だよ。
の3つでした。
使用したデータはこちらからダウンロードできるようにしました。どうぞお試しください。
Dropbox - data2.txt
@kazutan先生にご参加いただき、Rmd を使って発表できたいい経験ができました。というか、急遽、Rmarkdown について発表をお願いいたしました。急なお願いにも対応してくださり、感謝です。
【追記 2016年3月6日】
今回のデータのように順位にタイがある場合のウィルコクソンの順位和検定は coin パッケージの wilcox_test() がよりよいようです。でも、結果はほとんど変わりません。
【普通のウィルコクソンの順位和検定】
wilcox.test(rank ~ gender, data = d, correct = F)
Wilcoxon rank sum test
data: rank by factor(gender)
W = 27532, p-value = 0.07193
alternative hypothesis: true location shift is not equal to 0
【coin パッケージのウィルコクソンの順位和検定*1】
wilcox_test(rank ~ factor(gender), data = d)
Asymptotic Wilcoxon-Mann-Whitney Test
data: rank by factor(gender) (0, 1)
Z = -1.7995, p-value = 0.07193
alternative hypothesis: true mu is not equal to 0
【より正確にするならこう】
wilcox_test(rank ~ factor(gender), data = d, distribution = "exact")
Exact Wilcoxon-Mann-Whitney Test
data: rank by factor(gender) (0, 1)
Z = -1.7995, p-value = 0.07194
alternative hypothesis: true mu is not equal to 0
*1:gender を因子型にしないと動かない。
論文「顧客収益性の統計的分析」を読む
最近、統計分析の学習をしていなかったので、勉強になる論文を読んでみました。マルチレベル分析の経営学での応用事例を検索していて見つけたものです。偶然というか、第1著者は私の専門職学位論文の分析パートをチェックしてくださった先生、第3著者は専門職大学院のゼミの先生です*1。
論文タイトルは「顧客収益性のと統計的分析 ─管理会計研究のマルチレベル分析の適用可能性─」*2です。内容は、階層線形モデル(HLM、マルチレベル分析)を管理会計研究・実務へ活かす可能性を探ったものです。戦略論、管理会計研究の既存研究を概観し、シミュレーションを行っています。
特に勉強になったのは、
- ある階層のデータが少なくとも5を下回ると結果の誤差は無視できなくなるほど大きくなる。
- ある階層のデータが少なくとも10あれば、HLM は頑健な結果を得られる。
- 分散の極端な偏りに対しても、頑健な結果が得られる。
というものです。
HLM を使う利点として「多階層におよぶ影響がひとつの利益指標に集約されている時にHLMを用いると、それらがどのような階層からの影響力が大きいのかを説明できる」と述べています。例として、先行研究レビューと顧客別利益を支店・担当者・顧客・時間という4つの階層でシミュレーションを行っています。
シミュレーションで使用された R のパッケージはnlme
です。glmmML
と lmerTest
しか使ったことがないので、このパッケージを知ったことも勉強になりました。マルチレベル分析については、心理学や生態学の例を書籍やネットで見ることが多かったので、経営学のフィールドにいる自分としては、こういう論文はとても身近に感じます。
なお、マルチレベル分析の組織マネジメントへの応用としては、次の本があります。マーケティング・サイエンスの世界では、高度な分析がたくさん行われているようですが*3、その他の経営学の分野ではまだまだ少ないように思います。
学習を促す組織文化 -- マルチレベル・アプローチによる実証分析
- 作者: 北居明
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2014/03/05
- メディア: 単行本
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サービス・マーケティング3つのパラダイム
イタリアのマーケティング学会誌(たぶん)の Editorial*1 が勉強になったので、自分用メモ。著者は Evert Gummesson。日本では、ガメソンとかグメソンとかグマソンとか呼ばれています。たぶん、いちばん近い発音はグマソンかと。ストックホルム・ビジネススクールの先生です。
PDFファイルはこちら↓
http://www.francoangeli.it/Area_RivistePDF/getArticolo.ashx?idArticolo=45509
自分の研究に関係がありそうなものをネット上で物色してたどり着きました。イタリア語はよくわからないのですが、どうもサービス・マーケティングの特集号のようです。この Editorial はサービス・マーケティング研究の歴史を3つにわけて簡単に紹介しています*2。
その3つは次のとおりです。
- パラダイム1 1970年代まで サービスが認知される、すべてはモノ・製造業の時代。
- パラダイム2 1970年代〜2000年まで モノとサービスの違いを追求した時代
- パラダイム3 2000年以降 共有・相互依存およびシステムアプローチの時代
現代のサービス研究に重要なのは3つ目のパラダイムです。このパラダイムには、さらに3つの柱があると著者は言っています。
- S-Dロジック
- サービス・サイエンス
- 複雑性の研究(Complexity Studies)
S-Dロジックはすでに当ブログで詳しく説明しています。サービス・サイエンスはIBMのお商売です*3。私には3つ目の「複雑性の研究」が勉強になりました。マーケティングの複雑性は、ケーススタディ・ネットワーク理論・システム理論で研究されている、と。システム理論による「VSAアプローチ」という方法があることも初めて知りました。いまはそれぞれ何のことだかよくわかりませんが、参考文献がちゃんと紹介されているので、後で調べてみることにしますå。
自分の研究フィールドは零細業ですから、すぐに役立てられるかわからないですが、ちょうど研究の幅を広げたいなと思っていたところに読んだ論考なので、勉強になりました。
今年のデータ分析の学習はじめはドキュメント作成からスタート
今年は Reproducible research を意識したいです(下のスライドが参考になります)。昨年はデータと分析結果がとっ散らかって、自分が分析した手順・内容を忘れしまい、何度も同じことを繰り返すことがありましたので…。
www.slideshare.net
そこで、いつもは図書館で借りて読んでいる*1『ドキュメント・プレゼンテーション生成』を買ってきて、この週末に読みました。
ドキュメント・プレゼンテーション生成 (シリーズ Useful R 9)
- 作者: 高橋康介,金明哲
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2014/06/24
- メディア: 単行本
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恒例というか私の環境が悪いせいで、本どおりにやってもうまくいかず、PDF 出力で苦労しました。↓がうんともすんとも動かない。
knit2pdf("minimal.Rnw", compiler = "lualatex", encoding="UTF8")
しかたがないので、Rstudio で PDF 出力をしていけばいいかとあきらめました。Rstudio だとちゃんと PDF 出力できました。他にもbrowseURL("sample.html")
とすると、勝手に Rstudio が立ち上がるので困ったり、ITエンジニア・プログラマ属性がある方には簡単に解決できそうなこともヒーヒー言いながら、読了。
なお、フルパスでブラウザのありかを指定すればOKです(以下は私の場合)。
browseURL("sample.html", browser="C:\\Program Files (x86)\\Mozilla Firefox\\firefox.exe")
その後「R Markdownで楽々レポートづくり」を読んで復習しました。ということで、今年の内輪的な勉強会は R Markdown でぜんぶやろうと思います。