サービス研究の最先端テーマ「TSR」を知る論文
今日読んだ論文は Anderson et al.(2013)*1です。論文レンタルサービスの deepdyve を利用して読みました(無料期間で)。
Transformative service research(略して TSR)はまだほとんどの人が知らないテーマです。そのまま訳すと「変革的なサービス研究」。経済の大部分がサービス業なのだから、サービスがよくなれば社会が良くなるんじゃないか、という意味で「変革的」なのだ理解しています。
この TSR を研究している日本人はおそらくほとんどいなくて、北陸先端大の白肌先生くらいかと。今回の論文の共著者として名前が上がっています。論文では、TSRは次のように述べられています。
消費する実体(個人、集団、生態系)の幸福に関する良い変化や改善を生み出すことを中心としている消費とサービスの研究を統合すること
TSR のコンセプトは次の図で示されています。
出所:Anderson et al.(2013)
とってもシンプルな図。サービスする実体*2と消費する実体*3が相互作用することで幸福*4が生まれる。そして、この関係はマクロ環境も影響を与える。まぁ、当たり前です。でも、一見当たり前のものをきちんと整理、追究していくのが研究だと思います。当たり前の中に意外な発見があればベストなんですけど(そういう研究したいなぁ)。
企業の経営だけではなくて、もっと範囲を広げたサービス研究によって世の中を良くしていこう、ということでしょうか。論文中に例として上げられているのが、フィナンシャルサービス・ヘルスケア・ソーシャルサービスといった比較的「公共サービス」といえるものです。
たしかに、公共サービスがよくなれば、世の中の幸せは上がります。政策に関心がある人、公共団体(自治体とか?)には、TSR 関連の論文はぜひ読んでみてほしいですね。
*1:Anderson, L., Ostrom, A. L., Corus, C., Fisk, R. P., Gallan, A. S., Giraldo, M., ... & Williams, J. D. (2013). Transformative service research: An agenda for the future. Journal of Business Research, 66(8), 1203-1210.
*2:entity を実体と訳しましたが、もっといい言葉がありそう。
*3:同上
*4:well-being と happiness の違いがよくわからないけど…。