価値提案からサービス経験が生まれるまでをマクロ的視点で読める論文
昨日読んだ論文 Chandler & Lusch(2015)*1の紹介です。Chandler さんは女性です。あのチャンドラーと関係があるかどうかは知りません…。Lusch は S-Dロジック元祖の Lusch です。ちなみに、Vargo の指導教授が Lusch で、さらに Lusch の師匠が Hunt らしいですよ。マーケティング論マニアしか喜ばない情報ですみません。
さて、論文の内容です。何かを実証したり、新しい概念を構築するものではありません。Chandler & Lusch(2015)は「これからこういう研究トピックがあるよ」という研究テーマを提案する論文です。
私のように研究テーマを探しているものにとっては有益な情報があります。ここ最近は顧客エンゲージメント(カスタマーエンゲージメント)について調べているので、論題に engagement と書いているだけで反応して読みました。
内容はマクロ的。価値提案(value propotision)、エンゲージメント(engagement)、サービス経験(service experience)について、とても抽象的な定義をしてします。例えばこんな感じ。
value propositions as invitations from actors to one another to engage in service
engagement as alignment of connections and dispositions
service experience as many-to-many engagement
つたないですが、訳すとこんな感じ。
- 価値提案=行為者からサービス*2に従事することになる他の行為者への招待状
- エンゲージメント=外部との関係と顧客の気持ちをつなげること
- サービス経験=多対多のエンゲージメント
企業から顧客に価値提案*3が行われ、それによってエンゲージメントが起こり、最終的にサービス経験となる、という流れを著者たちは説明しています。う~ん、わかったような、わからないような…。
サービス経験という言葉は、定義されることなく、よく使われるので、改めてサービス経験について考えられたのはよかったです。
マクロ的な論文だったので、実際のビジネスの現場(ミクロ)にどう応用するかは、まだまだわかりません。どちらかというと、政策のほうに役立つ論文かもしれないですね。
*1:Chandler, J. D., & Lusch, R. F. (2015). Service Systems: A Broadened Framework and Research Agenda on Value Propositions, Engagement, and Service Experience. Journal of Service Research, 18(1), 6-22.
*2:このサービスはS-Dロジックでいうサービスであることに注意。業務としてのサービスのことではありません。
*3:S-Dロジックの文脈では「価値提供」が存在しないことに注意。価値はサービス受益者によって独自に現象学的に決められます。平たく言えば、価値は人それぞれ状況によって違います。