Knowledge As Practice

JAIST(東京)で Transformative Service Research に取り組んでる社会人大学院生の研究・勉強メモ

経営学以外の知見を積み上げて議論していく価値共創の論文

前回「スマート・エクセレンス」という論文*1を読みました。今日読んだのは、それに関係する論文です。タイトルは「文脈視点による価値共創経営: 事後創発ダイナミックプロセスモデルの構築に向けて」(藤川・阿久津・小野 2012)*2


第一著者・藤川先生の文章はキレキレです。論旨明快で、いつもすごいなぁと尊敬しています。前半、サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)*3を3つの視点からすっきりと整理されています。その3つの視点とは

  • サービス観の違い
  • 価値概念の違い
  • 顧客像の違い


です。論文中にある図表がとてもわかりやすい。

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出所:2つとも藤川・阿久津・小野(2012)から引用。


この論文の大事なところは「価値共創における顧客プロセス」のモデルを示したことです。まず、一般的に考えられる「並行モデル」「集束モデル」「交叉モデル」を示します。その次に、これから3つのモデルは不十分として既存研究を参考にしつつ、「複雑、ダイナミック、事後創発的」なモデルを着想します。


文化心理学、生態心理学まで話が及ぶのでけっこう難しいです。ただ、西洋文化圏とアジア圏は違う文化なのだから、モデルも変わってくるというのは納得できます。


経営学以外の知見を積み上げて議論していくスタイルは勉強になります。ぜひ、皆さんも読まれてください。

*1:小野譲司(2014)「スマート・エクセレンス 焦点化と共創を通した顧客戦略」『 一橋ビジネスレビュー』, 61(4), 56-75。

*2:藤川佳則・阿久津聡・小野譲司(2012)「文脈視点による価値共創経営: 事後創発ダイナミックプロセスモデルの構築に向けて」『組織科学』, 46(2), 38-52。

*3:なお、S-Dロジックについてはこちらのシリーズを参照してください。
http://hikaru1122.hatenadiary.jp/entry/what-is-sdlogic-01

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